現代のゲーム機といえばiPhoneやスマホ。ゲーム=アプリゲームという時代だ。ここ数年はこの流れが加速し、家庭用ゲーム機市場は終わりを告げて衰退していくとまで言われていた。しかし、この2016年、2017年で家庭用ゲーム機市場の予測を大きく裏切る動きがあった。
品切れ続出!任天堂とソニーの戦略
アプリゲーム全盛期のなか、2016年と2017年に大ヒットした2つのゲーム機がある。順にご紹介しよう。¥
PlayStation VR(2016年10月13日発売)
<引用元>Playstation(新型PSVR)
ソニーのPSVR販売戦略(ハード)
VR元年と言われた2016年10月13日に、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアから、PlayStation VR(以下、PSVR)が発売された。発売当日から店舗やネットでは品切れが続き、月に1度ペースの再入荷台数もわずかとなり、約1年間品薄が続いた。
実は、PSVRが発売されるまでには、長い販売戦略期間があった。PSVRの名前が世間にお披露目されたのは、遡ること2年以上前。2015年9月15日開催の「SCEJA Press Conference2015」で、開発中のVR機器の名称はPlayStation VRに決まった事が伝えられた。その後、2016年3月15日開催のGDC(Game Developers Conference)で、2016年10月13日にPSVRが発売される事が決定したと公表された。
この3月の発表もPSVR販売の戦略として重要な時期だったのではないかと考えられる。競合となり先行して発表されていたのが、HTC社から発売されているHTC Vive、そして現在Facebook社傘下の、Oculus社から発売されているOculus Riftである。
Oculus Riftの出荷開始は2016年3月から、そしてHTC Viveの発売開始が2016年4月となり、VR元年と呼ばれた年の最初の盛り上がり時期が、GDC開催時期であった。そこで、高額で購入が必要なハイエンドPCベースで動くVRヘッドマウントディスプレイではなく、ゲーム機(PS4)初連動の、VRヘッドマウントディスプレイとして打ち出す事で、手に入れやすいハイスペックVRヘッドマウントディスプレイの立ち位置を一瞬で築いたのである。
ソニーのPSVR販売戦略(ゲームタイトル)
発売までの6ヶ月間の間、今まで関係性を作ってきたパブリッシャーの協力もあり、ソニーはインパクトある有名タイトルをローンチ時の発売に向けて連続して発表を続けて期待を煽った。
そのタイトルを一部紹介すると、セガゲームスから、「初音ミク VR フューチャーライブ」、バンダイナムコエンターテインメントから、「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」、「サマーレッスン 宮本ひかり」、カプコンから「KITCHEN(バイオハザード関連コンテンツ)」、ワーナー・ブラザーズから、「バットマン アーカム VR」などが揃っている。
結果、2016年10月13日PSVRの発売日が、VR元年の一番の盛り上がりを見せる日を迎えたのである。その後も、2017年1月下旬に、カプコンから「バイオハザード7 レジデント イービル」がリリースされ、勢いを増して販売が促進されている。
そして、2017年10月14日より新型PSVRが発売され量産体制に入り品薄は解消された。
この1年品薄状態を続ける事も、販売戦略ではなかったのではないかとすら感じる部分もあり、PSVR初号機はマーケティング的な位置づけで量産せず、市場ニーズを図りながら、ユーザーの欲求も向上させる巧妙な戦略ではないであろうか。
現在世界中で200万台のPSVRが流通しており、今後品薄が解消されどこまで伸びを見せるのか引き続き追っていきたいと思う。
Nintendo Switch(2017年3月3日発売)
<引用元>画像新型Nintendo Switch
2016年、任天堂は、これまで距離を置いていたスマホゲーム業界についに参入した。DeNA社との協業で最初にリリースしたのは、スーパーマリオラン。2016年12月のリリース以来、1億5千万ダウンロード以上を記録している。
上記の発売の2ヶ月前に、2016年10月20日に任天堂HPから発表されたのが、「Nintendo switch」である。発売前のコードネームは「NX」とされ、今までのWiiなどの据え置きゲーム機の後続機などではないとされていた。そして、任天堂は据え置きゲーム機ではなく、後発ながらスマホにシフトしたと話す声も多く聞こえていた。
以下に掲載しているのが、最初に発表された際の「Nintendo switch」の初公開動画だ。
この動画が公開された時には、各所で色々な意見が飛び交い、やはり据え置きゲーム機はもう時代遅れとさえ声があがっていた。まず注目されたのが、この動画が全て外国人のライフサイクルで構成された映像であるという点だ。日本向けターゲットではなく、更に大人向けにターゲット戦略をたてているのではないか?との声があがった。
更に、据え置きゲーム機なのに、ポータブルゲーム機にもなる・・・Wii・3DSを中途半端に引きずっているとの声もあった。ただ、筆者はこの動画を見たときに任天堂の戦略が見えた気がしたのだ。動画をよく見てみるとわかるのだが、この時点で、現在売れに売れている任天堂IPソフトの情報が動画に散りばめられていたのである。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
「マリオカート8 デラックス」
「スプラトゥーン2」
「スーパーマリオ オデッセイ」
任天堂は革新的なハードで売り出しているだけではなく、世界中から愛されているキラーゲームタイトルを多く持っており、それはスマホでは表現できない奥の深いゲーム性、そして親しみのあるキャラクター性など独自のノウハウで構築されている。そして、2017年3月3日の発売と同時に「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」もリリースされ、その世界観にユーザーは魅了された。そして「Nintendo switch」は品切れ状態が続いたのだ。
その後、「マリオカート8 デラックス」「スプラトゥーン2」の順に発売を行い、年末商戦にむけて「スーパーマリオ オデッセイ」が発売された。戦略通り年末商戦も成功し、2017年12月に任天堂からプレスリリースが配信され、全世界1000万台を突破したと発表された。あれだけ、据え置きゲーム機はもう古い、時代遅れ、売れない・・・などと声を上げた人がいる中、見事に任天堂は勝ち抜いたのである。
両社の戦略に見え隠れするのが、コンテンツの影である。結局どれだけ素晴らしいゲーム機であっても、そこでプレイするキラーコンテンツがないかぎりゲーム機はただの箱にしかならず、ハードとソフトが揃って初めて面白さを体験できる。それは任天堂を見ると一目瞭然で、結局家庭用ゲーム機でもスマホでも、キラーコンテツをリリースする事で成功をおさめているのである。スマホにはスマホゲームの面白さがあり、その他のゲーム機でもそれぞれの楽しみ方があるということなのだ。
番外編:ファミコンブームの再来!?
昨今では、現在の日本のゲーム文化を作り出すきっかけにもなった「ファミコンやスーパーファミコン」などのソフト売買がさかんに行われている。驚きなのは、ソフトによっては数万円の値をつけるものもあるが、有名タイトルだから値がつくわけではなく、マニアの中で貴重とされるものへ高額な値付けがされる傾向にあるという点だ。
2016年から2017年にかけて、そのようなブームを加速させるかのように任天堂からハードが販売された。
ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ
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ファミコン時代のソフトを30本収録されたミニファミコン。
製品名:ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ
発売元:任天堂
発売日:2016年11月10日
販売価格:5980円(税別)
ソフト収録本数:30本
ニンテンドークラシックミニ スーパーファミリーコンピュータ
製品名:ニンテンドークラシックミニ スーパーファミリーコンピュータ
発売元:任天堂
発売日:2017年10月5日
販売価格:7980円(税別)
ソフト収録本数:21本
両ハード共にソフトを差し込みプレイする必要はなく、ハード本体にソフトのデータが内蔵されているのが特徴。本体のサイズは手のひらサイズではあるが、その当時と変わらないゲームがプレイできるのである。。
任天堂とソニーの一番の販売戦略は、革新的な体験ができるゲーム機考え抜いて開発し、そこでしか体験できないキラーコンテンツを提供する事といえるのではないだろうか。